自分の蝶を放て!

花娘たちのプロデュース、何かやらなきゃ!

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東北の温泉町で3人の花娘に出会った。
秋田県鹿角市の古代遺跡「ストーンサークル」のすぐ隣にある花畑で、朝靄のなか、毎朝5時から手入れ作業に汗を流している。
0.4haの土地に、40種類の色とりどりの花が咲いている。
花娘たちは、おしゃべりしながら枯れた花を取り除き、水をやり、時期に合わせた植え付けをてきぱきとやっていく。
作業時間は毎日ちょうど1時間。米屋、八百屋、電気屋。3人とも、商売があるから、6時になると、さっとそれぞれクルマで帰っていく。もう1人、早朝は忙しくて来られない建設会社の女将さんが、昼前に除草剤を撒きに来る。
4人の花娘のユニット名は「大湯パンジーの会」。年齢は秘密だ。
7年前、電気屋の育ちゃんが、思い立った。

このままじゃ、ダメだ。何かやらなきゃ。

温泉町では、生まれ育った若者たちが都会に出て行って戻ってこなくなっている。戻って来たくても、戻れない。仕事がなくなっているからだ。
何かしなきゃ町は元気にならない。何ができるだろうか?
自分にできること、昔からやりたかったことがあった。
それは、花を植えてみんなに楽しんでもらうこと。
花でどれだけ町が元気になるかはわからない。
けれど、やってみようと思った。

町に花を植える活動からはじめて、いつか、すてきな花畑をつくれたらいい。
みんなに楽しんでもらえる花畑。いつでも寄ってもらって休んでいってくれるような花畑。車いすの老人たちも楽しめるような花畑。
それはどこにつくったらいいだろうか。

土地があるわけではない。予算もない。
しかし、ビジョンは人を動かす。
50数人が集まり、地元企業も4社参加してプロジェクトができた。趣旨に共感した建設会社が、所有している草ボウボウの土地を、掘り返して使えるようにして提供してくれた。

花娘たちが毎日磨き続けて、そこは素晴らしい花畑になった。
はじめは思いつくままに好きな花を植えてみた。80種類の花が咲き乱れたが、花同士の相性、色の組み合わせ、咲く時期など、試行錯誤を重ねて、品種は半分に絞って、いまのベストの形に落ち着いた。
朝日の当たる時間、少し日が昇った午前10時頃、そして日暮れ時、時刻によって花畑は違った顔になるという。

2年前、秋田県の花壇コンクールで県知事賞を受賞した。昨年は農林中央金庫賞。「小さな親切運動」からも、これまで2回表彰を受けた。

花畑の周辺には、老人が見えるように、クルマで周回できる道も作られている。
中央には、優に200人が座れる広場もある。ここで、コンサートだってできるだろう。

「植花夢(うえるかむ)」という看板が花畑の前にある。

花娘たちはダジャレも美しい。
それは、たくさんのひとに、この花畑を楽しんでもらいたいと願い、毎日、花の世話をやってきた人たちの気持ちが表れたネーミングだった。

温泉町の花畑「植花夢(うえるかむ)」は、観光ガイドに載っていない。
しかしそこは、いつ誰に来てもらっても恥ずかしくない、町が誇れる花畑になっている。
(佐々木直彦)

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