佐々木直彦の i to B ブログ

ワンシート企画書の罠

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ビジネスプロデューサーの育成をしていて、これはちょっと考えないといけないな、と思うことがある。
それは、「ワンシートで提案書をまとめるのが重要」という企業のカルチャーだ。

企画書は一枚にまとめよ、という企業はたくさんある。意思決定者は忙しいので、提案は簡潔にわかりやすくしよう、という趣旨からはじまったことである。たしかに、一枚にすれば書類整理もしやすい。
さまざまな要素を一枚にまとめるのは大変だから、一枚なら大きい紙でもよい、ということで、A3一枚という場合が多い。

じつは、このワンシート企画書は大きな危険を孕んでいる。
問題の整理はできているが、魅力的なビジョンやそこに至る創造的な解決方法、プロセスが描けないままに、資料が完成してしまいがち、という危険である。
ワンシートにすること自体がダメなのではない。ワンシートで分かることは、いい。
だが、ワンシートにしようとする際には陥りやすいワナがあり、多くの人がそれにはまる。この隠れた事実に気付いていない人があまりに多いということを言いたいのである。

ワンシートの罠をまとめてみよう…
1.限られた紙面にたくさんの要素を詰め込む
2.問題整理で自己満足してしまう
3.シートの中でつじつまを合わせようとする

1シートの中に、状況が整理されている。つじつまも合っている。もちろん提案もあるが、ここがダメだから直したい、というレベルで、これで未来が拓けるかもしれない! とワクワクするようなものはない。発想が広がらず、逆に収束してしまう。つまり解決をうみだすパワーのあるものにならない…結局、創造的な提案にはならず、意思決定者を動かせない。
こうなりがち。
とくに、エクセルで企画書を作る人は、このワナに陥りがちだ。

この罠を逃れる方法がある。
それは、十分すぎるほどの余白をとることだ。
発想の段階でも、できれば、まとめの段階でも。

人は余白があると、そこに何かを書き込んでみたくなる。空白のスペースに何があれば、面白いか、と想像を膨らませる。文字や絵で表現したものに、足りない何か。アンバランスな空白であってもよい。バランスが悪ければバランスをよくするための何か。それを生み出そうと思考する。それでアイディアが生まれ、未来へのイメージがかきたてられていく。意思決定者にプレゼンするなら、余白の部分に一緒に解決策を考えて何かを書き入れたくなる、というのは大変素晴らしいことだ。

エクセルというソフトを使いこなすひとは多い。エクセルはもともとセルをうめていくというフレームのソフトだ。表を作ったり、数式を当てはめて自動計算したりするためのもの。自由に余白をつくってイメージを膨らませるのにはむいていない。自然に余白のない発想に誘導されてしまう。気をつけなくてはいけないのだ。

A3の用紙の真ん中に、「私は何をやろうとしているのだろう?」と小さく書いてみる。
すると、まわりには、おおきな余白が広がっているはずだ。
余白を見ながら、ひとは、自分と向き合い、イメージを膨らませる。そして、余白に答えを書きたくなる。

最初は手書きの方がいい。実際に多くの企画のプロたちは手書きを大事にしている。文章が重要な場合は、手書きもよいし、机とパソコンが目の前にあるならエディタのような動きの軽い(つまり思考の勢いを妨げない)ソフトを使うのもいい。

そして、仕上げは、得意なものでやればいい。
このプロセスがあれば、エクセルを使っても大丈夫だ。

いわゆる「エクセル使い」の人で、この問題を超越してワンシート企画書を作れる人を私は二人しか知らない。その二人には、「余白」を活用して発想するプロセスがある。だから、エクセルを使うときも、そういう使い方、になっている。

何かを提案する際、一枚の用紙に、文章が3行書いてあるだけ、というのはダメなのかといえば、ダメではない。それを相手に見せながら熱く語って伝えられるなら、それで、企画はとおる。
その3行には、周囲に当然余白がある。その余白から、提案を聞く人も、おおいにイメージを膨らませることになり、自分のイメージをプレゼンターに確認したくなったり、逆提案したり、情報提供したくなったり、結局一緒に考えて実現したくなったりするのである。

余白のない企画はワクワクしない。