コンサルタントの事件簿

論理的に飛躍した発想を肯定する






プロデュースには、「もしこの方法で実行したら、こうなる」「彼にこの役割を任せるとこういうことになる」と、仮説を立ててはシミュレーションし、未来への道筋をイメージしていく、という思考の繰り返しが必要である。
シミュレーションには、プロデュースが進行する過程で自分と協力者たちにどんな感情が湧き起こるかという想定も含まれる。そして、できる限り、感動が生まれ、エンタテインメント性があるように進めようと考えたい。
プロデュース思考は、自分を含めて、プロデュースに関わる人一人ひとりのモチベーションを高める。
そして、これまでの慣例やルールに照らして考えていたのでは出てこないアイディアを創造し、障害を乗り越えてアイディアを実現可能にするパワーを生みだす。
なぜ、プロデュース思考が、現状から未来に向かって存在する壁を越えて、「すごいこと」を実現する力になるのか。
それは、プロデュース思考が持っている、まだはっきりとはみえない未来に向かって「楽観的で自己肯定的でエンタテインメント指向的」に進んでいこうとする特性によるところが大きい。





プロデュースには、論理の積み上げでは説明しきれない飛躍した発想がつきものだ。
まず、発案者のやりたいこと自体が飛躍している。
描くビジョンも飛躍している。
そして、ビジョン実現に向けて行うプロデュースの鍵となるアイディアにもまた、飛躍がある。
例をあげて考えてみよう。










農業技術の専門家であるNさんが、ネパールの貧しい村を旅行した。そこでNさんは村人たちと意気投合した。温かいもてなしを受けたNさんの胸に「村を活性化するために、荒れた土地を耕して穀類を栽培し、子供たちの将来のために学校をつくりたい」という思いがこみあげてきた。
農業指導は自分にできる。資金は自分の資材を投入してもいい。しかし、とても足りない。そこで、日本国内の資産家や多少余裕のあるビジネスパーソンから資金を集めるために、パンフレットをつくり、ウェブサイトをつくる。そこで三年計画の進行を逐次映像入りで報告していく。出資者たちには、村人たちのコメントを添えた報告書を毎月送る。
このしくみをつくることを前提にして、資金集めに動こう。何人か当てもある。
このプランを多くの人に知ってもらうために、知り合いの写真家に村の動きを追いかけてもらって、雑誌に発表してもらうこともやってみる。
こういうアイディアで、足りない資金を集めよう。
実現すれば、村は豊かになり、村の子供たちは今よりずっと良い教育を受けられるようになる。村人たちは、がんばれば変革できることを身をもってわかるだろうし、子供たちは夢を持てるだろう。また、このプロジェクトに関わってくれた人たちは、みな達成感を感じ満足してくれるだろう。
Nさんは、こう考えた。










これはまさしくプロデュースの構想である。
Nさんのビジョンは、飛躍している。実現に向けてのアイディアも飛躍している。
プロデュースには、こうした飛躍がつきものなのである。
実際にうまくいくかどうかは、やってみなければわからない。
しかし、ビジョンは、飛躍があるからこそ魅力があるのである。また、飛躍したアイディアがあるからこそ、プロデュースにはワクワクしてくる要素があるといえるのだ。
だが、立場が変われば、見方も変わる。プロデュースには、飛躍があるがゆえの不確実性や危うさ、うさん臭さがあるともいえる。
だから、信用できないと感じる人は必ず現れると考えていい。
「言っていることは素晴らしいが、実現を信じることはできない」と思う人もいる。その人にとって、プロデュースは単なる絵空事としか感じられない。夢のような話についてプレゼンする人間は、はじめから信頼できないものだと考えるお堅い人もいないわけではない。
プロデュースには、「本当にそんなことができるのか」とう疑念や、「やってみて失敗したら誰が責任をとるんだ」という否定的な意見がつきものである。
多くの人が参加する会議に諮れば、必ずこういう意見が出てくる。
しかし、どんなに不確実なことに思えても、素晴らしい未来像を魅力的に示され、どうすれば実現できるのかを具体的に聞かされたとき、意識が変わり共感者となる人はいる。実現のために自分にできることがあれば手伝おうと申し出る人が登場することもある。
プロデュースに共感し、実現を信じて協力をはじめている人がすでにいた場合、さらに、少しでも成果が生まれた証明がある場合、支援者、応援者は増えやすい。
どんな未来を実現したいかを魅力的に示し、実現に向かってどうしていくのかを魅力的に話せるかどうかは、プロデュースの成否を大きく左右する。
つまり、魅力的なビジョンと、プロデュースに向けて過去にやってきた取り組みの実績、賛同者の有無は、新たな協力者を集める際の強力な説得材料になる。同時にそれらは、自分自身のモチベーションを高める材料にもなる。
ビジョンと現実の間にあるギャップを、いったいどうやって埋めるのか。
その答えを示すプロデュースには、大胆な工夫、アイディアが必要である。プロデュースの最大の魅力は、やはりここにある。
プロデュースには、この「魅力的な飛躍」をいつでも人にプレゼンできるように整理していく思考、自分自身が熱い気持を持ちつづけるベースとなる思考が必要なのである。
プロデュースを仕掛ける際は、現状からは飛躍した「目指すべき未来像」、すなわちビジョンをどう表現すれば魅力的かを、はじめの段階から考えたほうがいい。
また、どういうアイディアでビジョンを実現するかについて、相手に合わせて、どう表現すれば伝わるかを真剣に考えるべきである。
飛躍した発想を魅力的に表現できるようにするいっぽうで、論理的に説明できる部分、データや事例を示せる部分は、しっかりと整理して話せるようにしておくことが重要だ。
こうして、プロデュースの魅力を多くの人々に伝えられる準備が整う。