コンサルタントの事件簿

プロデュース思考の全体像①






未来へのストーリーを描き、プロデュースの実現に向けた条件を整備していくには、次の三つについて答えを出す必要がある。
Ⅰ. ビジョン(VISION)自分の欲求・動機と実現したいビジョンは何か
Ⅱ. 戦略(STRATEGY)どんな方法によってプロデュースを実現するか
Ⅲ. 価値(VALUE)プロデュースはどんな価値を生みだすか
これら三つと、Ⅳ. ストーリー(STORY)をあわせた四つの要素が、プロデュース思考の根幹になる。
VISION、STRATEGY、VALUEの三つとは、それぞれどういうことか。
ここには、思考の鍵になる「七つの質問」がある。一つひとつ、解説していこう。





Ⅰ. VISION 自分の欲求・動機と実現したいビジョンは何か





鍵になる質問
(1)「ビジョンは何か(自分は何がやりたいのか)」
(2)「なぜ、そのビジョンなのか(なぜ、それをやりたいのか)」
ビジョンを魅力的に表現し、「なぜそのビジョンなのか」というビジョンの背景にある理由を、「なるほどそうだったのか」と相手に納得してもらえるように、自分の言葉で語れるようにしておくことは、プロデュースにとって非常に重要なことである。
プロデュースは、「自分がやりたいこと」があってスタートする。
しかし、そこに第三者が、「自分のやりたいこと」に共感して、「それなら、私も一緒にやろう」と加わってくれることによってプロデュースになる。
そのとき、「自分のやりたいこと」は、自分だけのものではなくなっている。「私のやりたいこと」が「みんなのやりたいこと」になっている。
こういう状況をつくることがプロデュースでは必要だ。
たとえば、農家を営む青年であるKさんが、
「こんなにうまい野菜をつくっているのに、さっぱり儲からないのはおかしい。儲かる商売をして、もっといい生活をしたい。女の子にもてたい。それから都会ともっと交流したい。東京に出て商社マンになっている同級生の結婚式に出たら、きれいな女性たちがたくさんいて気後れしてしまった。もっと自信を持って勝負できるような人生に転換したい。すごいことをやって有名にならないと、この状況を変えられない」という思いを持ったとしよう。
「もっと儲けて、いい生活をしたい」とか、「女の子にもてたい」とか、「すごいことをやって有名になりたい」というのは別に悪いことではないし、「俺も心のなかではそう思う」という共感は集まるだろう。
だが、それだけではもったいない。町の有力者や政治家、地元に仕事があったら働きたいと思っていた若者たち(男女を問わず)、町の活性化を願う町民など、多くの人に共感してもらって大きなパワーをもらってプロデュースを成功させるためには、みんなが乗りやすいビジョンを設定したほうが絶対にいい。
Kさんが「僕は、この街の農園でつくられる野菜を全国一の有名ブランドにしたい。そうして、野菜と、野菜を中心とした食品加工ビジネスで、都会のスーパーやデパート、高級レストランと取引して町の名前を全国に広めたい」といったとすればどうだろうか。
この言葉は、魅力的なビジョンになっている。
何をやるかは明確で、多くの人が共感してくれる可能性がある。そして、このビジョンが実現できれば、Kさんの個人的な思いも結果的には果たすことができるのは間違いない。
ビジョンとは、そういうものなのである。





しかし、ビジョンは、目指す方向性が明確で魅力的な未来への展開がイメージしやすいものであるいっぽう、ビジョンを考えた人はなぜそんなことを考えたのか、というビジョンの背景ある事情が隠れてみえなくなっていることが多い。
それを知りたいと思うのが人間心理なのである。
この場合も、Kさんがビジョンの背景にある自分の個人的な事情を説明すると、「なるほど」と腑に落ちて納得してくれる人は非常に多いだろう。
「じつは、こういうことがありまして」という本音の話を聞くと、過去から現在、そして未来に向かって展開するストーリーをイメージして非常に興味が湧いてくるものだ。
「女の子にもてたい」という本音も、ビジョンを説明される相手にとっては親近感の湧くネタになる。
こうした、ビジョンの裏にある「WHY」の部分がわかると、たとえそれがどんなに個人的なことであっても、共感は広がりやすい。
「自分は何がやりたいのか」「なぜ、それをやりたいのか」という二つの問いを自問自答して、ビジョンを魅力的に表現していくことは、プロデュースの思考の鍵になる。
なぜ自分がそれをやりたいのかを自問し、ビジョン実現によって自分はどうなるのか、自分と関わる人たちはどうなるのかについてイメージすることによって、「このプロデュースはやる価値がある」という確信が自分のなかに生まれる。
それは、モチベーションを高め、また、プロデュースについて人にプレゼンする際の説得力を高める。