マーティン・セリグマン博士の著書に
『オプティミストはなぜ成功するか』があります。
スポーツでも、学業でも、仕事でも、
悲観主義者(ペシミスト)より楽観主義者(オプティミスト)
のほうが成功することが、数々の実験で実証されている
・・・ということが書かれています。
私は、クライアント企業のなかにある隠れた成功法則を整理して
それを新しいノウハウにして組織の中で展開するコンサルを
いくつかやってきました。
こういうコンサルをやるとき、一般には有名ではない、けれど、
じつはすごい成功を収めた人たちをインタビューします。
そういう方々には共通点があります。
●現状をブレークスルーして、すごいことを実現してやろう
というマインドをもっていること。
●実現したいゴールのイメージを魅力的に描いていること。
●それを、伝わる言葉で語れること。
●キーパーソンを共感者にして、自分のやりたいことに、
巻き込んだこと。
これだけで、十分にビジョナリーですが、
もう一つ大事なことがありました。
ビジョンがどんなに魅力的で、強力な共感者の支援が
得られたとしても、じっさいには、すべてが思惑通り
スムーズにいくことはありません。
反対者、妨害者が現れたり、不運な出来事があったり、
支援者の状況が変わって支援が打ち切られたり、
途中で諦めても仕方ないようなことも起きます。
しかし、成功する人は、そういった危機が訪れたとき、
それも、成功へのプロセスと考えます。
さらに、忙しく動き続けて考える時間が取れなかった状況が、
これで改善して、じっくり考え、新たな人脈を開拓する時間が
取れるようになった、というように、物の見方を転換する
ということをやります。
危機を、逆にチャンスと見るのです。
角度を変えて見るとダメな部分が魅力的に見えてくる。
失敗も、逆境も、そう考えると、ポジティブに捉えられ、
いま自分がやるべきことが自然にみえてくる。
こう変わります。
そして、じっさいに、そういう危機があったおかげで、
最初は想定していなかった成果を生みだすことができた
という人は大変多いです。
みなさん、こういう体験をしているんですね。
ものの見方、考え方を転換して、
違う角度から組み替えて捉え直すことを
「リフレーミング」と言います。
危機が訪れたとき、成功した人たちは、
「リフレーミング」によって楽観的なマインドをつくり、
ブレークスルーを実現しています。
危機の時に限らず、はじめから終わりまで、
時には大きく、時には小さくリフレーミングをして、
自分と周囲を楽観的で前向きに、取り組める状況にしていた
という人が少なくありません。
そして、ワクワクする未来へとむかうストーリーを
ひとに語っていたり、自分の頭の中に展開させていた
(つまり、ポジティブな妄想をしていた)
という感じなのです。
「リフレーミングは」、自然に身についていきます。
この方法を実践した結果、思った以上の成果が生まれ、
自分も周囲の人たちも元気になれたという体験を一度すると
どうなるでしょうか?
そうですよね、またやりたくなります。
だから、自然に身についていくわけです。
では、なぜ成功した人は、リフレーミングをやったのか。
それは、
ビジョンを描き、ビジョン実現に向かって格闘すれば、
危機に遭遇したとき、楽観的に思考して
成功につながるプロセスを描きだすしか方法がなかったからだと、
私は思います。
そして、じっさい、そのリフレーミングが、
自分を肯定し、鼓舞し、共感者、支援者の応援も集めて
具体的成果へを生みだしていったのだと思います。
最後に、
じつは、逆のリフレーミングもあることをお伝えしておきます。
うまくいっているときに、あえて、マイナスの捉え直しをする
ペシミスティック(悲観的)なリフレーミングです。
トップに立つ人間は、これをやることによって、
好調時にこそ、危機を想定して備えるべきだと思います。
しかし、こちらだけだと、成功はしないでしょう。
自己肯定できなくなって、行動が抑制されてしまいます。
また、そういう悲観的なリフレーミングばかり口にする人の
そばに、人は近づきたくないですからね。
悲観的なリフレーミングの結果は、必要なときに
相手を選んで口に出すのが良いでしょう。
そして、そうした、いわば負のシナリオも、
一つのアンチテーゼとして、普及していき、
結局は、チームのメンバー、組織や社会に普及していく。
好調時に盛りあがる雰囲気を大事にしながら、
危機対応の戦略ももって、手を打ってもおく。
未来を見据えて、長期的な成功をつくりたいなら、
リーダーは、ときに孤独になって考えぬき、
ハードボイルドなマインドを持って判断すべきですし、
そういう世界を楽しめないといけない、と
いえるかもしれませんね。