
ビジネスパーソンが壁を越えるとき、あるいは大きく成長するときのパターンは、
次の二つの軸で整理して考えることができる。
- 技術・企画レベルの高度化
- コミュニケーションレベルの高度化
この二軸をもとに、キャリアの発展構造を見ていきたい。
人はそれぞれ、価値を出しやすい軸を持っている
人は誰でも、
- 技術・企画志向
- コミュニケーション志向
このどちらか、あるいは両方を併せ持っている。
ただし多くの場合、どちらか一方の志向が強い。
職種によっても、その傾向は表れやすい。
たとえば営業職にはコミュニケーション志向が強い人が多く、
開発・設計職には技術・企画志向が強い人が多い。
キャリアの初期段階では、
それぞれの志向に合った役割を果たしていれば、
比較的スムーズに成果を出すことができる。
キャリアが進むと、役割の性質が変わりはじめる
ところが、組織の中でキャリアを積み、役職が上がっていくにつれて、
求められるものは少しずつ変わっていく。
営業、開発・設計といった職種を問わず、
共通して重要になってくるのが
**「人を動かすこと」「関係性を設計すること」**である。
それは、
キャリアを重ねるほどリーダーシップが期待されるようになること、
そして、やりたいことや実現したい構想が大きくなるほど、
一人では成し得なくなるからだ。
創造的に議論すること、
人を説得すること、
考えを言語化し、伝え、共感を得ること。
こうした場面は、
役割のスケールが大きくなるほど、確実に増えていく。
技術・企画志向の人が壁に直面するとき
技術・企画要素の強い仕事をしてきた人ほど、
ある段階で壁にぶつかることがある。
それは、
技術そのものの価値が下がったからではない。
技術を「どう位置づけ、どう使うか」という役割が
変わり始めたからである。
このとき、
自分を評価し新しい役割を与えてくれる人や、
自分の技術を他の要素と掛け合わせて
価値に変換してくれるプロデューサーとの出会いが、
ブレークスルーになることが多い。
あるいは、
自分自身がそうした視点を持ち、
技術を軸に人や構想をつなぐ立場へ移行することで、
新しい世界がひらける場合もある。
コミュニケーション志向の人が壁に直面するとき
一方で、
人脈やネットワークを広げながら
ビジネスを進めてきた人にも、同じように壁は訪れる。
人に好かれ、信頼され、関係を築く力は大きな強みだが、
ある段階から、それだけでは前に進めなくなる。
そのとき鍵になるのが、
これまで自分が十分に扱ってこなかった
- 技術
- コンセプト
- 思考の枠組み
- 企画の構造
といった要素を理解し、
「会話できる」「判断に使える」レベルまで引き上げることである。
役割が
「つなぐ人」から
「意味づけ、方向づける人」へと変わるタイミングだ。
法人営業に現れやすい役割の転換点
法人相手に問題解決を提供する営業マンは、
この転換を特に強く求められる。
顔が広い、感じがいい。
それだけでは、いずれ限界が来る。
社内の技術スタッフと同じ目線で課題を捉え、
時にはそれ以上の問題意識を持って、
プロジェクト全体を前に進められるかどうか。
ここで求められているのは、
営業という職種を超えた「役割の変化」である。
継続的に学び、専門性を高め、
問題解決の質を上げていくことで、
クライアントからの信頼は深まり、
社内での影響力も自然と強まっていく。
個人営業でも、本質は変わらない
個人相手の営業でも、構造は同じである。
たとえば生命保険の営業では、
人脈やネットワークは極めて重要だ。
人に気に入られ、頼りにされることは大きな価値になる。
しかし、
それだけでは長く選ばれ続けることは難しい。
中小企業経営者の財務アドバイザーとして機能できる力、
高度なシミュレーションや独自の提案力、
人生設計を共に考えられるコンセプト。
こうした要素を持ち、
顧客に「判断の質」を提供できるようになって、
人脈は初めて、本当の意味で生き始める。
結論:壁を越えるとは、役割を更新すること
ビジネスパーソンが壁を越えるときに必要なのは、
不足している能力を埋めることではない。
これまでの強みを起点に、
次に求められている役割へと自分を更新することである。
その役割を果たすために、
技術・企画志向の人は
人を動かすコミュニケーションの質を高め、
コミュニケーション志向の人は
技術や企画を理解し、扱える範囲を広げていく。
学びやリスキリングは、目的ではない。
役割が変わるから、必要になり、結果として行われるものだ。
壁にぶつかったとき、
「何が足りないのか」を探す前に、
**「次に、どんな役割を求められているのか」**を考えてみてほしい。
そこから、次の一歩は自然に見えてくる。

