今回は、悩んだときのノートの使い方について、具体的な事例をもとに紹介したいと思います。

本山さんは、とある飲料メーカーのS支店で販売促進事業部に所属しています。
最近のS支店は、競合メーカーにシェアを奪われ、厳しい状況にあります。
そこで、本山さんは、担当地域に次々とオープンしている「働く女性をターゲットにしたカフェ」を他社に先行して攻略し、突破口を開きたいと考えました。
企画の柱は、新商品を含めた新しい「大人女子向けラインナップ」の投入。それは、他社が対抗してきても負けないと本山さん自身が考える、これまでにない新しい飲料のラインナップです。
これならお客様の心をつかめる!だからカフェはうちを採用してくれる!というひらめきがありました。
そこで、本山さんは自信を持ってマネージャーの滝沢さんに提案しました。
ところが・・・
これではうまくいかないな、と言われ、却下されてしまいました。
以前から自分の中で考え続けていたプランを否定されたので、本山さんはカッとなって「なんでダメなんですか?」とマネージャーにくってかかってしまいました。
滝沢マネージャーは
「このプランには、お店も営業も不在だね、大きな視点を持ってもう一度考えてみて」
と言い残し、席を立ちました。
本山さんには、否定された理由がよくわかりませんでした。
「いったいなぜなんだろう?
そもそも自分には、こんな提案をするのは無理なのだろうか?」
でも、このままで終わりにしたくない。落ち着いて考えてみようと、本山さんはノートを開きました。
本山さんは、まず、
「いったい、なぜうまくいかなかったのだろう?」
と書いてみました。

すると、この問いかけに関連した、いろいろなことが頭に思い浮かび、それを片っ端からノートに書き出していきました。
この企画に関するこだわりや最近の仕事への感情が次々とあふれ出てきました。
一方で、こんな疑問もわいてきました。
「私に何か足りなかった、ということはないだろうか?」
「やる気が空回りしていた、ということはないだろうか?」
「そもそも提案のレベルが低かった、ということはないだろうか?」
はじめは、時間をかけて考えた自分の提案が却下されたことに意識がいってしまい、怒りの感情があふれてしまった本山さんですが、ノートに書きだしてみて
「私は大事なことが見えていなかったのかもしれない」
と思いはじめました。
本山さんのように、提案が上司に却下されたり、プレゼンや商談がうまくいかなかったり、恋人や家族との関係がうまくいっていなかったり、なかなか解決できない悩みを抱えてしまうと、誰でも頭が混乱し、心も穏やかではなくなるでしょう。
こんなとき、どうしたらいいでしょうか?
解決への第一歩は、まずノートを開いて、
「いったいなぜ、こうなってしまったのだろう?」
という問いかけの言葉を書くこと。
「いったい私は何をすればいいのだろう?」
「どうすれば、課長を説得できるのだろうか?」
単純に、こういう言葉をそのまま書くだけでかまいません。
そして、その問いの答えを、思いつくままに全部書きだしてみてください。自分と向き合いながら、自分のペースで。
誰かに見せるものではありませんから、字が汚くても、乱暴な殴り書きでもかまいません。
心のままに書いていくことが大事です。
最初はノート2ページ分ぐらいになってしまうかもしれません。慣れてくると、最後まで書ききらないうちに、数行ほど書いたところで解決へのヒントが見えてくるようになります。
この作業をすると、書きだした言葉を自分の目で読むことになります。そこに大きな意味があります。じつは、書き出した言葉こそ、自分の思考そのものです。
それを読むとき、ひとは第三者の目を持てます。ですから、それを見ると、自分のことも、自分の置かれた状況についても、客観的につかめます。
それまでは、見えていないことがあり、だからこそ混乱していたのです。
これだけで、頭の整理は確実に進みます。
そして、自分がこうありたいと願っていることや、やりたいことも見えてきます。すると「こうすればいいのでは?」という自分なりの仮説も浮かんできます。
まだ最終結論ではなくとも、ここまでいくと、ずいぶん気持ちは楽になるはずです。
さらに、次に何をすればいいか具体的なイメージが浮かび、希望が生まれ、前向きな気持ちが生まれます。
何もしないで終わってしまい、頭の中がゴチャゴチャしたまま、前にも後ろにも行けないイライラを引きずってしまった経験はありませんか?
そうならないために、まず、「なぜ、こうなってしまったんだろうか?」と、「問い」を書きだしてみてください。