自分をどうプレゼンするか。
それは、キャリアにおいても人間関係においても、とても重要なテーマです。
自分自身を魅力的に伝えるには、何が必要なのでしょうか?
私が考える答えは、3つの要素に集約されます。
それは——「コンセプト」「ストーリー」「データ」です。
コンセプト:プレゼンの“柱”を立てる
プレゼンには「柱」が必要です。
それが、コンセプトです。
どんなに言葉を尽くしても、人の心に響くプレゼンには、
明確で魅力的なコンセプトが欠かせません。
コンセプトが定まれば、伝える内容も一本筋が通り、
論理的に構成されたプレゼンになります。
たとえば、誰かに「どんなことをやりたいんですか?」と聞かれる場面。
ここから、自分のプレゼンが始まることが多いでしょう。
ストーリー:聞き手の心を動かす
あるエンジニアが「1ミリくらいに近づいて接写できる、手軽なカメラを作りたいんです」と言ったとします。
それを聞いた相手は「面白そう。でも、なぜそんなカメラを?」と理由を尋ねるはずです。
彼がこう答えたとしたらどうでしょう:
「どんなものでも、近づいて見ると全く違う世界が見えてきます。
人の肌も、鼻も、まるで別のもののように見える。
小さな傷でさえ、生々しく、そして美しく感じられるんです。
この体験を通じて、“命や物を大切にしたい”という気持ちが自然と湧いてくる。
心が落ち着き、“やるべきことは目の前にある”と思えるようになる。
接写の世界を多くの人に体験してもらえたら、日常がもっと豊かになるはずだし、
ちょっと大げさに言えば、世の中、もっと平和になるんじゃないかと、本気で思っています。」
この回答には、「接写がひらく新しい世界」というコンセプトがあり、
その人自身の価値観やビジョンが語られています。
コンセプトが明確になると、聞き手の意識は自然とその人に向き、
「もっと聞きたい」「自分も話したい」と思わせる力が生まれます。
そこから、人間関係も深まっていきます。
ストーリーは過去と未来をつなぐ
相手からは、さらに質問が飛ぶかもしれません。
- なぜ、そんなことを考えるようになったのか?
- どんな人生を歩んできたのか?
- 接写カメラを実現する技術的なポイントは?
- どうやって売るつもりなのか?
- 実現するには何が必要か?
ここで求められるのが、「ストーリー」です。
過去の体験から今につながる物語、そして未来への仮説的な物語。
それらを一つの流れとして語ることで、聞き手はあなたの世界に引き込まれます。
たとえば、先のエンジニアがこんなエピソードを語ったとしたら?
「子どもの頃、父がそのまた父から受け継いだ古い机で勉強していました。
不満もありましたが、机に刻まれた無数の傷が面白くなってきて、
やがて“歴史”を感じるようになったんです。
引き出しにあったルーペで傷を観察してみたら、
目に見える世界がまるで変わって感じられて……
それが“接写”の世界への入り口だったんです。」
このような話を聞くと、相手も「自分の昔の思い出」や「古いものの価値」について
思い出し、語りたくなるかもしれません。
データ:信頼とリアリティを加える
そしてもうひとつ、大切なのが「データ」です。
データは、あなたの話に信頼性とリアリティを与えてくれます。
たとえば——
「机の傷の87%が、長さ3〜5ミリ、幅1ミリ以内、深さ0.5ミリ未満に収まっていた。
傷の種類は5つに分類できて、それぞれが“父が小学生時代に種類の異なる彫刻刀でつけたもの”だったと知った。
そこから父の子ども時代の情景が浮かんできて、とても面白かった。」
こんなデータを添えると、話のリアルさがグッと増します。
また、実績や数値、研究成果、専門的な情報なども、
自分の専門性や信頼感を伝える“データ”になります。
プロフェッショナルほど、こうした根拠をしっかり持っているものです。
自分自身を魅力的にプレゼンするために
自分のビジョン、ポリシー、追いかけているテーマ、
成功や失敗の体験、そして「自分は何をやりたいのか」。
これらを魅力的に語るために必要なのが、
**「コンセプト」「ストーリー」「データ」**の3つです。
この3つの要素がかみ合うことで、
あなた自身の価値が、より鮮明に、より力強く相手に伝わっていきます。