コンサルタントの事件簿

ブレイクするまで場数を踏め






話すのが苦手だという人は多いだろう。相手が一人でも、うまく話すのは簡単ではない。なかなか伝わらなくて、いやになってしまったという経験は、おそらくだれにでもあると思う。
では、相手が五人ならどうか。十人ならどうか。三十人ならどうか。百人ならどうか。千人ならどうか。一万人ならどうか。
よのなかにはプレゼンテーションというものがある。
いい企画を立てて、いい企画書、プレゼンツールをつくって、プレゼンの場に臨むことができても、実際のプレゼンがうまくいくとは限らない。相手の人数にもよる。
私の場合、相手が十人くらいまでなら、比較的早い段階から自信がもてるようになった。しかし、相手が三十人、五十人となると、まったく下手なプレゼンになってしまうことが多かった。講演となると、もう、かなりダメだった。
しどろもどろになったり、何をいっているのか自分でもわからなくなったり、自分の話が自分でもおもしろくなくなってきたりして、自分一人で自分の話にうなずきながら、だれもうなずいてくれない聴衆を見ないようにするなんていうことは何度もあった。
だけど、ある日突然「受ける」日はやってくる。
場数なのである。
考えてみれば、五人や十人を相手にしたプレゼンに早くから自信がもてたのも、そういう機会が多かったからに他ならない。
どんなに話が下手な人でも、場数を踏めば、必ずうまくなる。
度胸も、根性もついてくる。日頃の意識も変わってくる。予期せぬ事態が起きても、何とかしてしまえるようにもなる。バラバラだった何かが、あるときを境にふと、カシャカシャと音を立てて気持ちよくかみ合ってくる。目の前の空間で、何かが響きあっているのを実感できるようになる。
話し下手で苦労した人間にも、「とても話がうまいですね」といわれる日は、やってくるのだ。
世界は、徐々に開けるものではない。あるとき、急に開けるものなのである。
組織の変革も同じで、組織風土がゆっくりと変わっていくということはない。
一万人の組織なら、あるときあるプロジェクトの十人のメンバーががらりと意識を変え、別の事業部のあるグループでも同じように二十人ぐらいが急に変わる。だが、大多数はまったく変わらない。そういうことが何度も繰り返され、ある瞬間に、組織全体が雪崩をうったように、ドドッと変わるのである。
しかし、それまでには布石がある。一部のメンバーがまったく新しい動きを起こしたり、何らかの新しいメッセージが投げかけられたり、そんな変化が幾度も繰り返されてきた結果なのである。
場数を踏むということと、これはまったく変わらない。
ブレークするまで、焦らず場数を踏むこと。何かを目指して頑張っているのに、なかなか壁を越えられないと落ちこむことがあるかもしれない。
しかし、それは運が悪いのではなく、きっと場数の踏み方が足りないということなのだ。





世界が開けるのはいつも突然だ。焦らず場数を踏もう