コンサルタントの事件簿

いい条件で転職するために






エンプロイアビリティの二つ目の観点は、好条件での転職を可能にすることだ。
プロ志向のビジネスパーソンたちはもともと、この観点を強くもって仕事をしてきた。
個人の力が事業を左右するような業界では、高い報酬を払っても価値ある人材を引き抜くことができれば、他社に対して優位に立つことができる。
野球でもサッカーでも、プロスポーツの世界では、それは昔からの常識だった。
プロスポーツでなくとも、実績をあげた外資系企業のトップには「引き抜き」のオファーなど、専門性の高い仕事をするプロフェッショナルにたいするヘッドハンティングは恒常的に行われてきた。
そうした職種の人々は、自分の能力、キャリアにたいして、どれだけの処遇(年収・ポジションなど)が与えられるのか、ということを常に意識してきた。
いい条件で転職すること事態がプロらしいキャリアになり、それが、後でさらにいい条件で転職できることにつながるということも少なくないからである。
彼らにとってエンプロイアビリティは、業界内の人材流通市場における「自分の市場価値」に他ならない。
そこにあるのは、アクティブな意味で、エンプロイアビリティを日ごろから磨いていけば、かならず好条件で転職することができ、転職によってさらにエンプロイアビリティを高め、プロフェッショナルとして堂々としたキャリアをつくることができるという価値観である。
人材の流動性がおきやすい業種では、パッシブに考えても、日ごろから、少しでも専門的な能力をたかめて、世間並み以上の条件で、いつでも、どこか自分を雇ってくれるところがあるという状況にしておくことが、もっともリスクを少なくする働き方だという発想になる。
終身雇用が実質的に崩れたいま、この観点でエンプロイアビリティをとらえる傾向は、あらゆる業界・業種のビジネスパーソンのあいだで強まっていくだろう。