コンサルタントの事件簿

プロデュースとは②






プロデュースのスタートにはビジョンがある。
ビジョンは、実現したい未来のイメージである。
ビジョンが魅力的で、ワクワクドキドキするものであるほど、人々の共感は集まる。それ以前に、ビジョンを描いた自分自身のやる気と元気がパワーアップする。
だから、魅力的なビジョンは実現しやすい。
なぜ、そのビジョンなのか、なぜ、そのプロジェクトなのかという背景には、必ず「自分に特有の事情」がある。
したがって、プロデュースは、その中心にいるプロデューサーの個性が大きく反映されたものになる。
プロデューサーにとって、「自分とは何か」という問いは、ビジョンを表現するとき、プロジェクトを創造するときに何度も繰り返され、それによって、自分自身が自分を、さらに深く理解できるようになるということが起きる。
「いったい自分とは何者なのか」「自分のやりたいことは何か」「自分のできることは何か」「自分は何のために生きているのか」「何が自分らしく、何が自分らしくないのか」「自分が社会に提供できる価値は何か」といった自己探求は、説得力のあるビジョンを生みだす源泉になる。
ビジネス・プロデュースの場合などは、ビジョンの共感して力を貸してくれるパートナーたち、あるいはプロジェクトによって生みだされた新しい商品・サービスを買ってくれた生活者からの反応によって、自分自身を再発見するということも起きる。
プロデューサーは、プロデュースによって、自己価値を創造し、向上し、また、確認していく。
プロデュースは、自分のやりたいことを、自分だけでなく協力者にとっても実現したい共通の夢にして、その夢を実現するための思考と行動のプログラムである。
その「共通の夢」がビジョンだ。
プロデュースは、現実に存在するさまざまな制約条件のなかで、ビジョンに向かって成果をあげていく方法を考えなくてはならない。そこには戦略が必要であり、そして、その方法を実行するチームが必要になる。
それがプロジェクトだ。





プロジェクトは、「人」と「しくみ」の二つの面から考えるとわかりやすい。
誰が実行チームのメンバーとしてふさわしいかを考えて、チームを構成する。
いっぽうで、そのチームの力を最大限発揮して成果が生まれるしくみをつくる。
そして、成果が生まれるように、チームを機能させ、プロジェクトを運営していけばいい。
プロジェクトといっても、数千人規模のものもあれば、たった二人のプロジェクトもある。
社員数3万人のメーカーが、基幹事業を大再編してまったく新しい商品ラインナップをつくるというプロデュースなら、製造、開発設計、営業、物流、資材、広告宣伝、システム、経理など各部門から大量の人が関わり、数千人のプロジェクトになってもおかしくない。
一人の女性が、「全国レベルの料理コンテストで上位入賞して、料理研究家としてデビューする」という自分プロデュースをするなら、チームのメンバーは、本気で指導してくれるコーチ役の先生と自分自身の二人だけかもしれない。あるいは、料理研究家としてデビューするためには、雑誌などメディアとの関係が重要になるだろうから、自分を買ってくれる雑誌の編集者との出会いも必要になり、メンバーは三人かもしれない。この場合は、三人になってもメンバーは「常勤」ではなく、本人も含めてみな非常勤のままプロジェクトは進むということになるだろう。
プロデュースの種類によって、プロジェクトの規模や形態はさまざま考えられるが、構造は基本的には同じである。





プロデュースは、ビジョン実現に向けてのプロセスで、社会と自分、そして、プロデュースに関わる人々が響きあう行為である。
ビジョンの実現に至るまでには、さまざまな物語が生まれる。
挫折もあれば、喜びも涙も感動もある。それらをすべて予測することはできない。
しかし、ビジョン実現までのプロセスをイメージし、物語の展開をイメージすることはできる。
「これは世の中をあっと驚かせるすごいことなんだ」「これができると、これだけいいことが起きる」「これによって私たちの未来が拓ける」というイメージをつくりだし、そのイメージに、現実をしだいに近づけながらプロジェクトの影響力を高めていくことは、ビジョンを実現するために非常に重要である。
啓蒙、普及、説得、宣伝、販売促進などのプロモーションはプロデュースの成功を左右する。
それは、プロデュースという行為が、ビジョンへの共感者を獲得し、人間的なネットワークのパワーをつくりだして実現への流れを確固たるものにしていくことで成立するからにほかならない。(③へつづく)