コンサルタントの事件簿

ビジョンには聴くときのルールがある



 

私は、デジタルハリウッド大学大学院で、


この10年


「プロデュース能力開発演習」


という授業をやっている。


 

先週で2019年度の第1クォーターが終了した。


1回が90分。たった8回の授業だが、


この8回で、プロデュースとは何かを体感してもらい、


一人ひとりがビジョンを作成する。


 

授業の中では、プロデュースとビジョンの基本を学び、


リアルにビジョンをプレゼンしあう。


 

また、当社で開発したCoreNoteというウェブシステムをつかって、


ビジョンとビジョンで、履修者全員で交流する。


 

コミュニティをつくって、


ウェブ上で、情報とアイディアを提供しあい、相互に刺激し合い、


ビジョンをブラッシュアップしていくのである。


 

当初は、プロデュースもビジョンも考えたことがなかった


院生たちが、2ヶ月ほどのあいだに、やりたいことを明確にし、


魅力的にし、自信をもち、徐々に変わっていくプロセスは


本当にダイナミックだ。


 

院生は、年齢的には20代から60代までいる。


海外からの留学生が3分の1程度。


企業から派遣されてくる人もいるが、


デジハリに来るまで、


こういう授業を受けたことのある院生は、


一人もいなかったはずだ。


 

デジタルハリウッド大学は、大学発ベンチャーの創出数で


日本の大学として11位(2018年度 51件)となっている。


 

1学年たった60人しかいない大学院の授業の中から立ち上がっていて


しかも公的資金投入ゼロ、というのが大きな特徴だ。


1位の東大は271件だが、大学院生の数は1学年3500人以上。


単純には比べられないが、院生数あたりの創出数でいえば、


デジハリは、日本で1番多いと言っていいのではないかと思う。


 

「プロデュース能力開発演習」は、


自分のやりたいことを元に、


新しいビジネスをプロデュースして立ち上げていくための、


ひとつのインフラになっていると思っている。


 

短期間で、互いのビジョンをより魅力的でリアルなものにしていく


ことができるのは、ビジョンの聴き方のルールを大事にしているからだ。


 

このルールがあるから、誰でも、自分と向き合って


自分のビジョンを、より魅力的なものにしようという


モチベーションがうまれる。


 

これは、人のビジョンを、ちょっとした自分の「聴く力」で


すごいビジョンにしていく方法だ。


 

これによって、人は、ビジョンを聞くことの大事さ、面白さを知り、


互いに対話することによって、ビジョンをよくしていく方法を自然に


身につけていくことができる。


 

今日は、その話をしたいと思う。


 

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相手を肯定して受けとめてあげる聴き方をすると、


聞き手のあなたの存在によって、


相手のビジョンは、より明確で素晴らしいものになる。


そして、相手の心に「やる気スイッチ」が入り、


ビジョン実現に向けて、さまざまな行動が起きる


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やりたいことがないと、プロデュースは、はじまらない。


「こんな状況をうみだしたい」というビジョンがないと、


人は、行動のしようがない。


 

これは、重要な真実だ。


 

しかし、心の中で、


「こうなったらいいなあ」とか、


「もうこんな状態は嫌だ、脱却したい」とか、


思っていても、


はじめからどんどん行動できる人は少ない


と私は思っている。


 

頭の中に、ふっと湧いてきたアイディアがあったとき、


その面白さを自分で感じていたとしても、


 

〈自分にそんなことができるのだろうか〉


〈このアイディアは、夢で終わってしまうような思いつきに過ぎないのではないだろうか〉


 

と感じて、そのままにしてしまうことは、誰にでもあるはずだ。


 

自分では、素晴らしい思いつきだと思っても、


人に話したら、馬鹿にされるんじゃないか、とか


先輩や上司に話したら、怒られてしまうかもしれない


と思って、やめておこう、となることはよくあること。


 

つまり、はじめの段階で、新規なアイディアや思いつきは、


とても弱い存在だということだ。


 

当然、そこには、


さまざまなツッコミどころ、論理的な不整合が


ありえる。


 

だから、


本人が、自信を持って、そのアイディア、思いつきを


「これはいける!」


「やるべきことだし、実現できるかもしれない」


と感じて、


モチベーションをもって、


自分でさらに考え、内容を整理したり、情報を集めたり、


誰かに会いに行って相談したり、という行動を起こすためには、


 

その気にさせる


 

ということが必要なのだ。


 

そこで、


ビジョンや、プロデュースの話を聴くときは、


次のようなスタンスが重要になる。


 

1.まず、相手の考えていることを肯定し、受けとめる


 (相手の話の良い部分を、それはいいねえ、とか、それはすごいことだね、などと言ってあげよう)


 

2.相手が実現したい状況をイメージして、膨らます


 (相手が思っている以上に、実現した際に生まれる新たな価値、誰がどうハッピーになるのか、など、影響力の広がりなどもイメージして、どんどん膨らまして伝えよう)


 

3.相手の実現したいことを、どうやったら実現できるか


  相手以上に未来をイメージして、一緒に考える


 (もちろん、はじめは、不確実な仮説や妄想レベルのアイディアでも構わないので、いろいろな可能性を考えてアイディア提供、情報提供しよう)


 

4.事実誤認など修正すべき点があれば相手に伝える


 (上記1~3をしたうえで、相手が目指している価値創造を実現するために、修正すべき点などをアドバイスすると、相手はありがたく聞いてくれ、それを役立てようと思う)


 

この4つだ。


 

これで、相手は、自分の「やりたいこと」が肯定されただけではなく、


もっと真剣にきちんと考えていこうという気になる。


 

もちろん、聴いてくれたこと、肯定してくれたこと、


一緒に考えてくれたことなどが良いイメージとなってインプットされ、


感謝してくれるだろう。


 

そして、つぎに「聞き手の私」と会うときには、いろいろ調べたり、


動いて小さな実験をしてみたりして、考えを深めてくるはずだ。


 

こうして、「やりたいこと」は、


誰かをハッピーにすることをイメージしながら


次第にカタチになっていく。


 

こういうコミュニケーションを取れるようになると、


信頼感が高まる。


また、たくさんの良い情報が集まるようになる。


だから、ちょっと相談に乗るだけで、たくさんのビジョン実現に


関与できるようになるのだ。


 

とても逆説的なことだが、


 

人のビジョンを支援できる人は、自分のビジョンを実現しやすい


 

という法則がある。


 

なぜそうなのか。理由は2つある。


 

1つめは、人のビジョンを支援できるひとは、


相手応援してくれる関係になりやすいから。


 

2つめは、近くにいる人同士のビジョンは、


どこか共通の部分があることが多く、


互いに、ビジョン実現のための必要な情報や人脈、


コンセプトワークを共有できる場合が多いから。


 

つまり、ビジョンの聴き方が上手くなると、


自分のビジョンが実現しやすくなるのだ。


 

とうぜん、そういう関係をつくれるチームや組織は


ハイパフォーマンスで、変革、創造的な成果が出やすく、


ムードもよく、お互いの個人的志向も理解してリスペクトしあい、


応援しあえる関係になれる


 

ということになる。